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ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 212

売り込み   オリーさん

最近彼が仕事先から直接店に来る事が多くなったから
僕は一人で店に入る日が多い
でもそのおかげで、店のメンバーと話をする機会が増えた

厨房を覗くとテソンさんがダイエットメニューを教えてくれたり
運がいいと今日の特別メニューを試食させてくれたりする
その時は後ろでマヨさんが、
あまり食うなよ光線をしっかり出していたりもするんだけど

事務室ではチーフのデスクでチーフ代理の先生が
物差し片手に深いため息なんかついてる姿も見かける
先生、体重が落ちてますよね、羨ましいなあ、なんて
僕はつい言ってしまうんだけど、先生は力なく微笑むだけだ
先生にはきっと先生の悩みがあるんだろう、などと思う

先生がチーフ代理になってからは、前よりももっと律儀に
開店前の準備をしているウシクさんを手伝ったりもする
一緒に椅子を並べながら、先生、ちょっと痩せましたね
なんて何気に言ったりしちゃうと
ウシクさんは、僕のせいじゃないからねっと、つっけんどんに答える
深い意味はありませんよ、と僕はあわてて弁解するハメになる

チョンマンさんは監督の姿を見つけるたびに
チケットの件をしつこく聞いているけど
監督は相変わらずのらりくらりと逃げている
最近はチョンマンさんは監督を無視する作戦に出た
今度は監督がチョンマンさんにチケット欲しくないのぉ
などとねじりよったりしている

この前、監督の前でチョンマンさんに
チケット何とかしましょうか、とつい言ってしまった
えええ?ギョンビン、おまえ金あるの?
チョンマンさんは猛烈に食いついてきた
お金はないけど、コネはあります
空軍時代の同期がKALのパイロットやってるから聞いてあげましょうか
家族特待制度とか使って何とかしてくれないって

チョンマンさんは僕を熱く抱きしめた
すると監督がチケットはあるんだから余計なことするなと怒り出し
チョンマンさんは余計なこととは何だと逆ギレし
僕は二人の仲裁をすることになってしまった
やっぱりあんまり深入りしない方がいいと反省した

ソヌさんは空いた時間にパソコンとにらめっこしている
この前元チーフのとこのホームページ、すっごくダサいねえ、と言われた
そうなんですか…
でも大丈夫、僕が完璧リニューアルしてあげるから
でね、最初の画面に僕のシャドーボクシングの映像をフラッシュで入れるから
ソヌさんは自信満々に説明してくれた

え?ミューズのホームページにですか?BHCじゃなくて?
何言ってるの、両方だよ、君
リンクするから、どっちもしょっぱなは僕のシャドーで楽しむんだ
はあ…
何よその顔、文句ある?
BHCはともかくミューズにシャドーですか…
僕は思わず口ごもってしまった

まずい?じゃ仕方ない
とっておきの下着姿でのライトパッチンにしようか?
僕の斜め上からのアップで入るあれ…いいなあ
ええっと…その画像はどこだっけ…
ソヌさんはそう言って自分の世界に入ってしまった
きっとどちらも却下されるんじゃないかと僕は心配している

ソグさんとドンヒさんのネクタイの違いもわかるようになってきた
幅が若干広いのはソグさんだけど、素材はどれも絹だ
ドンヒさんは、ソグさんより幅がほんの数ミリせまいけど模様がより派手
素材は色々、絹のもあれば化繊のもある

そんなわけで、ここには色々な人がいるんだと
BHCって面白いなあ、なんてあらためて感心しているこの頃だ

そして今、例のあの人に肩をがっつり抱かれている
あの人って言えばあの人…
いきなりよおっ!と言って僕を捕まえた

お前よお、歌手デビューするんだって?
えっと…映画の歌を歌えって言われてます
だよな、だよな。でもな、お前、誰か忘れてないか?
はい?
歌と言えば、もうこの人しかいないってのがいるだろ?
はい?
はいじゃねえだろ、いるだろ?

そうでしたね。テプンさんですよね?
僕もかなり世慣れてきたからこれくらいの対応はできる
テプンさんはますます僕の肩にかけた手に力を入れる
そうよ、この俺さまよ
なんであのきつねは俺に声をかけずに、ド素人のお前ら使うんだ?
あいつが敏腕ってのはガセだろ?俺を見落としてるんだからな
お前、そこんとこ何とかしろよ

え?何とかって?
決まってるじゃねえか
歌なら僕らより上手い人がいますよってきつねに教えてやるんだよ
はあ…

いいか、よく聞け
世の中広しと言えど、丈の微妙なジャージが俺より似合う奴はいねえ
はいっ
手品だってプロ級だ
はい…
野球はまじプロだ
はいっ
早食いもできる
はいっ
食い散らしもできる
は…い
やくざと喧嘩もできる
はい
やくざの親戚もいる
はい

おまけに、めっちゃ陰気な検事の弟がいる
はいっ
その嫁さん、ほんとは俺の嫁さんになるはずだったんだが
とてつもなく美人だ、ついでにチェリムも美人の部類だ
はいっ
ふたりの姉さんはめっちゃ色っぽい
はいっ
妹は背が高いのが玉にキズだがキュートだ
はいっ

どうだ?
はい?
すげえだろ?
あ、はいっ。家族自慢はジュンホさんに引けを取りません
だろ?よしっ、じゃあきつねに俺を売り込め
はあ?
いいか、ごく自然にやるんだぞ。
俺に言われたなんて悟られるなよ、きつねは妙なとこ鋭いからな
機嫌のよさそうな時を見計らってだな…
テプンさんの歌って心に響きますよね、とか何とか…いいか?
はあ…

ミン、どうした?
その時突然後ろから彼の声がした
僕とテプンさんはびくっとして同時に振り返った
何がごく自然にだ?きつねがどうかしたか?
彼は僕とテプンさんの顔を交互に見つめている

テプンさんが後ろ手で僕の背中をつついた
しょうがねえなあ、今言っちまえよ
い、今ですか?
そうだよ
歌をほめればいんですよね
さりげなくだぞ
この状況でさりげなく?
いいからっ

どうした?
けほっ、あ、あのね、歌の話をしてたんだ
そうそう、歌の話だ
ほお?
BHCの中ではテプンさんが一番歌がうまいんじゃないかって
いやあ、ギョンビン、マジでほんとのこと言うなよ 
バンバンッ!
痛いっ!
あ、わりいわりい。んで何だっけ、ギョンビン?

えっと僕らよりテプンさんの方がずっと歌が上手いだろうって
いやあ、ギョンビン、マジで照れるなあ
バンバンっ!
痛いっ!
あ、わりいわりい。んで何だっけ、ギョンビン?
えっと、だから…えっと歌に響く心?じゃなくて…
逆だろっ、心に響く俺さまの歌声だろっ
あ、そっか…

もういい、わかった
え?
きつね…じゃなくて元チーフ何がわかった?
テプンはやる気があるんだな?
へ?
歌を歌う気があるんだな?
いやあ、そのやる気があるも何も、とにかく俺って上手いからさあ…
っておいっ!電話なんかしないで人の話聞けよっ!

キチャンか、僕だ
例の話だが、一人決まった
店の面子だ
そうだ、さっき話してたろう、僕は仕事は早い
顔は馬系
バラードOK、リズム感もいいからR&BもOK、軽いポップ系でもいい
服のセンスはない、がそれを逆手にとってもいい
とにかく一度そっちにやる
会ってやってくれ
名前はソ・テプン
頼む、じゃ

ぱんっ!

テプン、一度ミューズに顔を出してくれ
場所はこの名刺に書いてある
キチャンというマネージャーがいる
行く前には電話してやってくれ
いいね?

お、おお、この俺にぜひお願いしますと言うなら
まあ断る理由はないんだが、おれも色々忙しい身だからなぁ…

ぜひに、だ。頼む

お、おお、じゃあしゃーねえなあ、なっギョンビンっ!
バンバンっ!
痛いっ!
あ、わりいわりい。
んでデビューとなったら忙しくなっちまうかなあ
店に来れないほど売れちまったらどうするよ
ギョンビン、悪く思うなよ
実力と人気の世界だからな、こればっかりは俺も手加減できねえ

んでもってサインの練習なんかもしとかなきゃだよなあ
女性ファンが急増しちゃったりしたら、ふひひん・・
あっと待てよ、チェリムがヤキモチ焼いたりしたら・・
んんと、仕事だからしょーがねえよなあ、うひひん・・
テジは喜ぶだろうなあ・・くひひん
身内にCD5枚づつ買ってもらうとして、えっと何枚売れるかな・・
こういう時にはやくざに頼んでもいいのかな・・
うう、どうする・・まっいっか、あいつら顔広いからな
ブツブツブツ・・

テプンさん、すごいやる気ですよね
そうだな、こっちも助かった
え?
渡りに船だ
え?
いや、何でもない。それより・・
それより?
キスマークつけたら一言教えろ、けほっ
気づいてなかったの?ごめん、誰かに何か言われた?
けほっけほっ・・
今日は店でネクタイきっちりしてね
言われなくてもするっ!けほっ

と言うことで、テプンさんも歌をやることになった
ちょっとやっつけ仕事のようだが、双方丸く収まったようなのでいいんだろう

そして彼は案外まぬけで、可愛いきつねなのだった・・


千の想い 94   ぴかろん

僕の肩に頭を乗っけて眠ってしまったイナを
僕は可愛いと思う
僕達は時に子供だったり大人だったりする
僕達はそんな自分を見せ合える仲なのだと思う
それは…
テジュンもそうなのかな…

テジュンがガタガタになると、イナもガタガタだね
頑張って突っ張っててもマッチ棒の燃えかすみたいな骨組みが見える
僕がお前のために出来ることってなんだろう

お前が僕のために
テジュンが僕のために
テジュンがお前のために

お前と僕がこうやって時間を過ごすことを許してくれている
自分を追い込みながら、だ
僕は本当は自分自身で立ち上がらなくてはならないのだ
お前とテジュンの好意に甘えている

それだけだろうか
ただ甘えているだけなのだろうか…

イナが眠ってから1時間ほど過ぎた
僕は空を見つめながらじっとイナを感じていた
自分の頭の下に入れていた腕をイナの背中に回した
起きる気配もない
イナの髪を弄ぶ
気付きもしない

もうそろそろ起きないと…
僕の配達もあるし
お前も出勤準備があるんでしょ?

そっと声をかけてみた
ううん…と小さく呟いてまた眠ってしまった
僕は身を起こしてイナの顔を覗き込む

キスしたら起きるかな…

唇を近づけかけた自分が可笑しくなった
自分の重みで少しばかり痺れている腕をイナの体に巻きつけて抱きしめた

「ぅわ…な…なに…」
「起きないんだもんお前ったら」
「えぇぇええ?」
「もう起きないとね。僕、配達行かなきゃ」
「…あ…うん…おき…る…」
「RRHまで送るよ」
「…うん…ありがと…」

寝ぼけ眼を擦るイナをせっついて車に向かった

**************

おかしい…
いつもならこんな俺をコイツがほっとくはずないのに…
なんか誤魔化されてるような気がする…
それに…
俺が『(ピー)してやる』って言ってるのに!
コイツの大好きな『(ピー)』で『(ピー)』を『(ピー)』して一緒に『(ピー)』したかったのに…
それだけじゃない!その後には俺がコイツの上に『(ピー)』して『Wait For Me』を踊ってぇそんで一緒にonce again oh yeah!って思ってたのにっ!きいっ!
そしたら…そしたら俺だって多少…いや、かなりの『運動量』になって

「痩せたはずなのにっ!」


ダーリンがはふはふ言いながら急に叫んだ
あれ…まだ満足してない?刺激が足りなかったかなぁ…どれどれ…んじゃ今度は…
ここんとこもツンツクツン

「あ!」

ふむふむぐりぐりりん

「あいっ!」

んでもってさっきのを組み合わせてぇちゅぱちゅぱちゅぅぅ

「あぐ…い…やめ…あ…いましたばっか…ああ…う…お…え…」

やだ!ダーリンったら時々こっそりポールと電話してるからってなにもこんな時に『日本語の五十音』の練習しなくったって!ちゅぱコシグリツンツク…

「か…く…は…ひ…ま…せ…な…あ…あ・あ・あああ・い・いっ・たたた・く・ぺ」

ぺ?!
ぺってなによ!
口『等』が止められないから聞けないけろんぐんぐ…

「ひ…あ…お…や…み…じゅ…てじゅ…」

がばっ☆

「てじゅ?!なによっ!なんでここにあのジジイの名前がでるのよっ」

僕は掌『等』の動きは止めないまま、思わずダーリンに抗議した
でもダーリンは意識朦朧最中で…けひん…カタカタと体を震わせながら手を泳がせているくふふん…
それを見て僕は大満足
また口『等』を働かせてダーリンを天国へと導く…


あ・あ・あ…絶対おかしい…
なんで俺ばっかり?!
こんなのヤだ!つまんない!
ああんもうやめてほしいのにっ…体がっ体がぁぁっ…

「…っギョンっ…ジン…はっ…」


ダーリンの背中が弓なりになって、僕は『ダーリン』を吸収する
崩れ落ちる腰を支え、そっとベッドに置いてあげる
荒い呼吸のダーリンの顔を見つめる
気持ちよかったかな?くふん…

「…ん…あ…あ…」

あは…まだ僕の掌『等』が働いてて、ダーリンは首をフルフル震わせながら僕のシャツに手を伸ばした

「も…やめて…あ…」
「らってかんじてるじゃん…」
「や…めないと…あ…ああ…絶交す…する…」
「うふーん嘘つきぃ」
「や…めて…キライに…キライに…なるぞ…」
「無理無理」
「いい加減に…あっああっあぁああ」

その後も僕はダーリンに『快楽と快感と天国』を何度も与え続けた
「ばか」と言い残してダーリンは燃え尽きた
はぁ…口『等』と掌『等』が少し疲れた…
ダーリンは既にくーすーと眠っていた…
その寝顔をみつめながら、僕はどうしてコーフンしなかったのかを考えていた

『やっぱ…イナなんだろうか…』

ふぅぅ…
ため息をついてベッドの横の床に座り込んだ
どうしちゃったんだろ…
ダーリンが僕を欲しがってるのに…
こんな事、初めてだ…
『スランプ』ってのかもしれない…
こういう事はポールに聞けば解るだろう…はぁ…
とにかくこれだけ『気持ちよくなった』ら、ダーリンも『濃い馬』に乗りたいなんて言わないだろう…
そんな甘い事を僕は思った

********

俺をマンションの前で降ろした後、ヨンナムさんは配達に行ってしまった
俺は部屋に戻り、シャワーを浴びて着替えた
テジュンが来る
ジャンスさんと一緒だ
店が終わったらどうするだろう…
帰る?それともここへ来る?

考えながら服を選んでいたら、ネクタイの柄が随分派手だった

RRHを出発する
歩くのには丁度いい距離だ
マンションの敷地から大通りに出たとき
後ろからクラクションを鳴らされた
振り向くとヨンナムさんがいた

「…」
「びっくりした?僕もびっくりしたよ」
「…待ってたの?」
「まさか!配達の帰りに通りがかったらお前が出てきた」
「…そっか…」
「乗りなよ。送る」
「いいよ…まだ配達あるんだろ?」
「うん、BHCの近くにね」
「そうなの?」

俺は促されるまま、トラックに乗り込んだ

「すごい偶然だろ?もしかしたら僕達って『運命の糸』で結ばれてるのかもね」
「…」

なんて事を言い出すのだ
無意識で言ってるのかな…
俺がじっと見つめていると
天然魔性男が口を開いた

「なにさ、不思議そうな顔して…」
「…すげぇコロシ文句だと思って…」
「え?」
「偶然とか運命の糸とか…」
「そ?こういうのコロシ文句?」
「…だと思うけど…」
「ふはは。気にしてる?コロシちゃった?」

俺は答えずにいた
ちょっとコロサレかかったのは事実だ…

程なく車はBHCに着いた
ヨンナムさんに礼を言って車から降りた
ヨンナムさんは柔らかな笑顔を残して去った


La mia casa_45   妄想省mayoさん  

ヨンジュンの"姫"と"姫"の生母..オ・ソンシムは今..
北のフィレンツェと呼ばれるモーツァルトの生誕地..Salzburg(ザルツブルグ)にいる..
展示会で人集りのできた程のソンシムの絵に感銘を受けた人物から依頼を受け..Salzburgで絵の制作に勤しんでいる..
ヨンジュンは"姫"とソンシムをSalzburgへ無事に届け..暫くはそこへ滞在していた..
して..ヨンジュンの財布には勿論"姫"の写真が入っている..
目が大きいのはソンシム似で..色の白さはヨンジュン似である..

「『待つことも覚えろ..』って先輩言ったじゃないですかぁ..」
「あん時は..状況が状況だ..今は傍にいたけりゃいくらでもOKだろう?..」
「そうですけど..」
「あのままあの土地に残ってりゃ良かったものを..俺を追っかけて祭に来るし..」
「なぁに言ってるんですかぁ..先輩と僕の仲じゃないですかぁん..」
「くっ..莫迦野郎..」

「それにさ..ソンシムったらさ..」
「ん..何だ..」
「今は一作目..仕上げの段階らしいから..僕がいると..気が散るんだって..」
「ぷはは..」
「でも夜はちょっと寂しいって..電話来るときあるかな..」
「でもま.."姫"がいるからな..」
「ぅん..」
「で?..お前は毎度..何処ぞのおなごと..乳繰りおうてる..つーわけか?..お?..」
「ぁふ..ぁひ..(>_<)..ちちくり..てさぁ..」

「何だ..まんまだろうに..お前に電話をするとだな..
 必ずといっていいほど..衣擦れ音が聞こえるのはどういう訳だ?..あ?」
「ぁ~と...僕はですね..<愛の伝道師>だからさ?..
 日々第一線で活躍する女性達の悩みや愚痴を聞いてですね..癒しているわけで..」
「靴下脱いでか?..ヨンジュン..」
「そりゃぁ..リラックス..ですからぁ..靴下くらい脱ぎますよぉ~~
 でもね..あれやこれや..いひひん..あははん..てなとこまでしないわけ..」
「ふん..現場に踏み込んでるわけじゃないからな..モノは言いようだ..な?はるみ..(→_→)..」
「〃(←_←)〃..(まじゃまじゃ#..)」
「ぁぅ~~..はるみちゃんまで..」

ヨンジュンの片手ははるみのほっぺたをきゅっ#..っと両側から摘んだ..
それさえも嬉しいはるみである..

「どっちみち..兄さんが戻ったらさ..向こうに行って来ようとは思ってるし..」
「そうか..ヨンフ氏はそろそろ引き上げてくるんだろ..」
「ぅん..」

ヨンジュン兄..(スングク酷似の)イ・ヨンフは俺が南に連れ帰った..
本来ならば..妻と息子..ミンギと暮らしているのだが..
ヨンフはオルシンの仕事絡みで今は上海で仕事をしている..

ヨンジュンは兄..ヨンフの留守の間..義姉とミンギの家を度々訪れ..
2人が寂しい想いをしないようにしている..
俺が元(ウォン)の調査の為に申ではなく..
ヨンジュンを上海に出張に行かせたのはヨンジュンを兄に逢わせる為でもあった..

「ぁ..そうだ...先輩..昨日かな..」
「何だ..」
「江南うろついてて気が付いたんだけど..」
「ん?..」
「シチュン君の店..ほら..何軒かあったカフェ..閉じちゃったんですか?..」
「あれか..実はだな..最初の店だけを残してな..他の2店舗は閉じたんだ..」
「ぁぅ..経営苦しかったわけ?..あの辺..飲食関係激戦区だもんねぇ..」
「ぃゃ..どの店も赤は出しておらんかったな..」
「??..じゃぁ何故に?..」

*******
シチュンのカフェ1号店はビルの2Fだが..1Fのレンタルビデオ店が移転し空きになった..
シチュンはこれを機に1号店は1Fと2Fの改装しよう...っと先ず考えた..
で..カフェメニューの構想を含め..俺等casaの連中を巻き込み..今後の展開を模索していた..

ある日の午後..ふらりとひとりでシチュンがcasaに遊びに来た..
皆で風に当たりながら..ベランダのテーブルで紅茶とケーキを囲み..
ああでもないこうでもない..と話しているのを闇夜は言葉を挟まずに..じっ..っと聞いていた
やっと口を開き..闇夜はシチュンが予想もしない提案をした..

「シチュンさん..今ある何店舗かのカフェ..1つにしてみない?..」
「え"っ..それってよぉ..他の店舗...潰せってことかぁ?..ぁぁ?..」
「ぁ~~っと..潰すんじゃなくて..閉じる..ていうか..」
「おんなじじゃねぇかよ...んな..んな..なぁに言い出すんだよ..まよシ..」
「mayo..折角シチュンが拡大していったカフェなのに..どういうこと?..」
「待ってよ..待ってよ..mayoシの話..聞こうよぉ..ね?..ね?..(^o^)」
「「ぅ..ぅん..」」

テスがテソンとシチュンの間に割って入り..2人のBH顔の手をぽちゃぽちゃで交互に握った..
ニコリとしたテスは闇夜へ顔を向けた..闇夜は続けた..

「カップル達の何かあれば<わんすいんあぶるーむーん>..っての..それはそれでいいんだけどさ..」
「ぉぅ..あそこは"定番"だからな..」
「ぅん..でもさ..若いカップル達が自分達らしく..ちょっとしたイベント事できる店があってもいいと思う..
 それに..シチュンさんの1号店の土地...上手い具合に後方へ伸びてる..クッチ?..」
「ぉぅ..」
「勿体ないよ..使える土地だよ..シチュンさん..」
「まよシ..」

暫し闇夜の隣で考えていたテソンは闇夜へ言った..

「mayo..もしかして..考えるコトって..ガーデン..??..」
「ぅん..どう?..テソン..」
「いいかもしれないな..」
テソンは闇夜の考えを読み取ったに見え..楽しそうに闇夜の背をトントン..と叩いた..

「何だよぉ..テソンまで..なぁ..ちぇみさんはどう思うよ..」
シチュンは闇夜と同じく..沈黙していた俺に振った..

「俺は闇夜の提案に賛成だな..」
「ちぇみさん..」
「お前さんのカフェ..全店舗の売上はそれなりに順調だが..
 これから先..飲食店の集中するあの界隈では先が見えん..共倒れになるやもしれんぞ..」
「ぉ..脅かさないでくれよぉ..」
「ぃゃ..脅しではないぞ..実際..お前の店の土地を狙っている奴がいるからな..」
「ぁ..っつぅ..」
「母屋毎..ごそっ..っと持っていかれる可能性も無きにしも在らずだ..」
「ぁふぁふ..誰だよそいつはっ#..」

シチュンが憮然とした顔で目を見張り..
俺と闇夜は一瞬視線を絡めた..テソンとテスの暖かい手がそれを散らした..

シチュンは闇夜を始めとするcasaの提案を丸2日..考え..
そしてどっちみち改装するのなら..今のカフェ1号店の土地毎..建物毎..買取る..ことを決めた..
かなり大胆な計画ではあるが..江南の一等地に近い土地を買い取るにはそれなりに¥がいる..
シチュンは実家に出向いた

シチュンの実家は蔚山(ウルサン)にある..シチュンは元々は..<蔚山のしちーぼーい>..なのだ..
シチュン父は蔚山のある慶尚南道を中心にかなり手広く焼肉&チゲのチェーン店を展開している..
手堅く店舗を増やして行った事業家で..なかなかの手腕の持ち主である..
実家ではシチュンの兄と姉がそれぞれの連れ合いと共にシチュン父の事業を手伝っている..

「店舗は増やしてなんぼじゃ..」
が口癖でもある父親の事業を見てきたシチュンは自分のカフェの店舗を増やしていったともいえる..

そんな父親にシチュンは頭を下げ..
最初渋っていた父親からカフェ1号店の土地を買取る資金の援助を取り付けた..
俺はいくらかでも安く土地を買い取れる様..やはり..ここはちょいとじじぃに手を回して貰わねば..と考え..
テス等が店に行ってる間..オルシン邸へはるみと出向いた..

「ふがぁっ#..わしに頼み事とは..生意気な..のぅ?..申や..」
「^^;;..」

茶を運んできた申はクスリ..と笑ったが..
俺が顎で指す「お前も何か言えっ#」のサインを読み..申はオルシンに言った

「しかし..ここはひとつ..ここはオルシンの鶴の一声が必要かと...」
「そうかのぅ..」(ニヤリと笑うくそじじぃ...)
「はぃ..テックヒョンさんと..mayoさんも絡んでのことですし..」
「う~~ぬ..んならば..仕方在るまいのぉ..ンッカッカッカ#..」

…そうか..わかった..わしに任せろ..と何故言えぬ#..くそじじぃめ#..

ぎりぎりと奥歯を噛んだ俺の顔を眺め..
むぉほっほ#..ふふ~~ん..と笑ったじじぃであったが..速攻で直接地主と交渉したようだ..
その甲斐あって..シチュンはカフェの土地を相場よりもかなり安く手中に収めることができた..

で..シチュン父にはちょいと面白いいきさつがある.. 
ソヌの母親はソヌが母親をソウルに連れ戻す7年前まで..(参考:154_mio tempo riservato4)
蔚山で現在の三清洞とほぼ同じ規模の[珈琲館]を営んでいた..(この件は闇夜が調査済みである)
なんと...シチュン父はソヌ母目当て..だったのか..否か..その店に毎朝夕..通い詰める程の常連だったのだ..

「俺のオヤジよぉ..今でも思い出すんだとよ..その[珈琲館]の女主人..」
BHCの営業前にちょいとcasaに寄ったシチュンはダイニングテーブルに頬杖を付き..
デザートを口に運びながら.ぼそり..と俺等に呟いたことがある..

「ふ~~ん..何処に行ったか判らないの?..そのヒト..」
闇夜は空々しく..シチュンに問うた..

「ぉぅ..わかんねぇらしいわ..蔚山から急にいなくなっちまったんだとよ..」
「そう..再会したいだろうねぇ..お父様..」
「ぉう#..会っちまったらよぉ..オヤジ..とち狂うかもしんねぇなぁ..老いらくの恋つーやつでよぉ..」
「ぁふ..老いらくって程..お歳召してるわけじゃないでしょうに..」
「まぁ..そうだけどよ..」
「シチュンは親父さんがもし..再婚したら嫌なのか?..」
「俺は別に構わねぇと思ってる..テソン..」
「そ?..」
「ぉぅ..オヤジ..おふくろ逝っちまってからずぅーっとひとり身だしよぉ..
 老後の為によ..連れ合いがいた方がいいだろ?..」
「そうだね..」
「ぅん..」

勿論...シチュンは未だ..
蔚山の[珈琲館]の女主人がソウルにいると思う筈もなく..
ましてや..[珈琲館]の女主人が実は..ソヌの母親..とは露知らず...

俺等4人と..はるみ(@_@)の頭ん中は..

【このシチュンとあのソヌが..
 義兄弟になちゃたりなんかして..
 オモオモぉぉ...(→→)(→→)(@_@)(←←)(←←)....】

揃ってんな妄想を打ち立て..シチュンの頭の上で..4人+一匹の視線は飛び交っていたのである..
******

「それでシチュン君のカフェ1号店..ビニールシート被ってたのかぁ..」
「ん..そういうこった..」
「完成いつなんですか?..」
「ん~..あと2週間はかかるか..」
「そう..完成パーティーとか..するのかな..」
「ん..実はな..」
「ぅん?..何かやるんだ..」
「ん..」

シチュンは改装後のカフェで..
いの一番..柿落としとも言うべき1つのイベントを執り行うべく..準備をしている
それは..まだ極秘だ..

「わぉ..そりゃぁいいな..楽しみだなぁ..」
「だな...」

「先輩..」
「ん?..」
「で..先輩のパン屋はいつ開店なわけ??..」
「っぅ...ぁ~~..っとだな..ん~~..時期を見ている【動を善しとする時がある..】ってこったな..ん..」
「それって..ただの”タレカ”..と違いますぅ?..先輩..あはっ#..」
「ぅぉ~~~い#..」

びっっったん#..すりすり〃...
俺はテソンよりも小さなヨンジュンの後頭部へ掌ぴったんをお見舞いした..

「ヨンジュン..」
「ぅん?..」
「お前もそうだぞ?.."姫"とソンシムに逢いに行くタイミングをずらすなよ..」
「ぅん..わかってる..」
「ん...」

ちびちびと飲んでいたツァールスコエ・セロの2杯目のグラスを互いに空にした頃合いに..
3人が店から帰ってきた..

…トトットコ..ダダ....ダダダ...どてっ#..

「ひ~~~ん..(;_;)...ちぇみぃ~」
「たはは..^^;;..まぁったく..どれどれ..」

滑って転び..ヘラクレス座のようにBetaっ..と廊下にのびているテスを抱き起こした..

「あ~~らら..猫ちゃん..」
「ぁ~~ん..ヨンジュンさぁん(;_;)..」
「けんちぇな..けんちゃな..」

ヨンジュンのお手々はテスの両頬をふわ~ん..と包み込んだ..

『ぁ..アタシも..ほっぺふわ~~ん..』

っと言いたげな闇夜ではあったが..
夜食の準備の前に..テソンの心乱してはならぬか...っと思ったのか..
闇夜はアヒル口になりそぉ~~なテソンの腰をすりすり〃していた..

テソンの和を堪能し...
今日は義姉と甥のミンギの待つ家に帰る..というヨンジュンにあれやこれや土産を持たせた..

「ヨンジュンさぁん..このブレッドとね..パウンドケーキね..僕が作ったの..(^o^)」
「ぅわ..猫ちゃん..腕上げたんだぁ..」
「ぅんっ#..朝..みんなで食べてね..」
「ぅん..おっけーおっけー#..」

ヨンジュンの両掌はまたテスの顔をふわりと包んだ..

「ヨンジュンさん..僕..送っていきますか?....ちぇみ..飲んじゃったしぃ..」
「たは..^^;;..すまん..」
「けんちゃな..けんちゃな..テソン君..」

ヨンジュンは"お手々"を前に差し出してテソンを制し..
最後にするりんこ@..はるみのほっぺたを撫でて帰っていった...

ヨンジュンと入れ違いに...
今度は外の鉄階段をどすどすどす..っと登ってくる音...
本日最後の客..のようである..


sin and sorrow 8   れいんさん  

僕はまるで奴隷みたいに、彼の要求に応じている
上目づかいに許しを請うのを待っているのか
情け容赦もない彼は、次から次に、アレもコレもと言ってくる

僕としてもそれ自体は嫌いではない
でも言いなりになってばかりではあまりに癪に障る
それなりに僕のペースってものがある
こんなに日の高いうちからずっとでは、さすがに参ってしまう

だいたいこれってキリがない
抜いても抜いても
雑草が庭のあちらこちらに・・
夏場は特に、気を抜くと
僕の大切な庭が雑草達に占領される

当の彼は涼しい顔してホースで水を撒いている
時折、雑草の生い茂っている箇所を指差して僕に合図を送る
軽く睨んで無言の抗議をしてみたが
分かってないのか、彼はにっこり微笑み返した



ガーデニングエプロンと首に巻いた白いタオル
ギラギラと照りつける太陽と麦わら帽子がスハにはとても良く似合う

『丸みを帯びたボディの空色をした古いトラック、荷台には山と積まれた干草、足を子供みたいにブラブラ揺らして腰かけてるスハ』
僕はありもしない空想を密かに楽しんだ

こんな日はスハ愛用のチェックのシャツも出番はなさそうだ
木の枝に申し訳なさそうに掛けられている
スハは白いTシャツ姿で、ジーンズのポケットに軍手を押し込み、しきりに手の甲で額の汗を拭っていた
僕はそんな光景を目を細めながら眺めていた

だいぶ参ってきたみたいだな
そろそろ声をかけてみようか

名前を呼ばれた気がして振り向いた
彼がおいでと手招きしている
僕は立ち上がり、軽く腰を伸ばしてから、彼のところに歩き出した

ガーデンテーブルにはグラスが二つ
大きな厚手のグラスにはアイスピックで砕いた氷と多分レモンソーダ
グラスの中の小さな気泡がプクプク浮かんでは消える
グラスの外側の水滴がコロコロとテーブルに転がり落ちた


「お疲れさん」
「お疲れさんじゃないですよ」

彼は白い歯を見せ、僕の頬に冷えたグラスをあててきた
ひんやりとした感触は確かに気持ちいいけど・・

「テジンさん、ずっと水撒きしてたんですか?」
「ん?スハを眺めたり、水を撒いたり、スハを眺めたり、水を撒いたり」
「・・ずるい・・」
「そうかな」
「そうです」
「・・スハを眺めてるの、好きだから」

ほら、やっぱりずるい
照れ臭そうにくしゃっと笑って
そんな風に言われたら、何も言い返せないじゃないですか
コホンと一つ咳払いして、僕はレモンソーダに口をつけた

「あ、待って」
ふいに伸びてきた指先が僕の顎を捉えた
グラスの氷がカランと音を立てた
清涼飲料水のCMみたい

彼の瞳と指先は僕を捉えて離さない
顎に添えられた指の力はさほど強くもないはずなのに
なぜだろう、時が止まったみたいに動けないのは

彼の顔がだんだん僕に近づいてきて
もう一方の手も僕の頬に添えられた
僕は瞬きする事すら忘れている

・・もしかして・・キスされる?

何もそれを期待したというわけではないのだけど
そう来るのかも、と構えてしまうのは仕方ないはず

「・・泥がついてる」

彼の指が僕の目の下あたりをそっとなぞった

なんだ・・泥か・・
・・ふん・・ドキドキしたりして馬鹿みたい・・

なんでそう思わせぶりに間を溜めるのかな
きっとまた僕をからかってるんだ
いつもそうやって知らない間に彼のペースに乗せられてる

ああ、もう・・
なんだか腹立たしくなってきた
そんな事でドキっとしてしまった自分に
僕はムッとしつつ、今度こそレモンソーダを流し込んだ

レモンソーダを飲んだスハに間髪いれずにキスをした
いわゆるフェイントってやつだ
スハが目を白黒させてる
何が起きたのか把握できてないらしい
目も見開いたまま
フェイント効果絶大
そうしてスハの口に含まれたレモンソーダは、まんまと僕が頂いた
奇襲完了

唇を離した途端、スハがゴホゴホ咳き込んだ

「な、何するんですか」
「レモンソーダが飲みたくて」
「なっ・・そっちに自分のがあるでしょう?」
「スハのが飲みたかったから」
「・・」

拗ねたようにプイと横を向いたスハは残りのソーダを飲み干した
横を向いたって、赤くなってるの分かってるのに




「・・汗・・びっしょりだな」

麦わら帽子から覗いた髪が汗で濡れてるのだろう
僕の髪を指で梳き、彼が言った

「誰かさんがちっとも手伝わないから」
僕は口を尖らせて皮肉を込めて言ってやった

「ははは。悪かった」
「本当に悪かったって思ってる?」
「思ってるさ」
「ならいいですけど」
「ほら、シャワー浴びてこいよ」
「え?今から?」
「そう。今から」
「でも、まだ・・ほら、ここやりかけだし・・」
「こっちの事はもういいから。後は僕に任せて」

彼は空のグラスを取り上げ
やりかけの庭が気になる僕をくるりとターンさせ背中を押した


La mia casa_46   妄想省mayoさん  

中庭を横切ってやって来たまんまるな躰は小さな段ボールを肩に担いでいる..
(躰がデカイから..段ボールが小さく見えるのか..^^;;..)
俺は闇夜とキッチンで後片づけをしているテスに声を掛け..廊下へ手招きした..

まんまるな躰は重たいガラス戸を片手でいとも簡単に開け..
肩に担いでいた段ボールを一旦廊下へ置いた..

そして..先ず..テスにご挨拶..
「ひょんにむ#..あんにょん#..はしむにか#」

テスに次いで..俺..テソン..闇夜..はるみに挨拶...
「ボス#..そんせんにむ#..あがっし#..はるみ殿#..あんにょん#..はしむにか#..」

はるみは90度に腰を曲げ..頭垂れ状態の蛸頭をすりすり〃..っと撫でる..
擽ったさにまんまるな躰を揺らしながら..姿勢を戻した蛸顔へ目の前に立つテスが言った..

「お前さぁ..もう僕の子分じゃないわけだし..
 その馬鹿丁寧な90度...止めろって..何度も言ってるのに..」
「あにむにだ#..自分にとって..ひょんにむ!!..は..ひょんにむ!!..であるからにして..」
「ぁぅ..ったく..まっ..突っ立ってないで入んな..」
「イエ..」

まんまる躰のまんまる蛸顔は..テスの元子分..腹心..ジョンダルだ..
お気づきの様に..<たんこま>テスが唯一.."えばった物言い"が出来る相手でもある..

ジョンダルが来ると..テスは「ちぇ~~みぃ~~」などとは言わない..
下っ腹にリキを入れ..ツツツン..トトットコ歩きもそれなりの歩幅になるのである..
俺とテソン等はテスを立て..ジョンダルの前では余計なコトは口にしないことにしている..
ま..<えばりてす>を眺めるのが楽しみでもあるのだ..

ジョンダルの家族は全羅南道でそこそこ広大な田畑を所有している..
[南道](ナムド)の愛称で呼ばれる全羅南道は古くから海と大地の恩恵を受け..
韓国を代表する食文化が発展していった

毎年10月には全羅道22の市と郡を代表する料理が出品される「大食文化フェスティバル」が開かれ..
料理人達は腕を競い合う..

「今年は是非#..皆様お揃いで南道へお越し下さい#..」

俺等はジョンダルの誘いを受け..今年の秋は[南道]へ出掛けるか..っと話している..

その南道の土地でジョンダルの家族は農業を営み..肥沃な土地では農作物が豊富に収穫できる..
ジョンダルが肩に担いできたダンボールの中身は家族が丹誠込めて育て..収穫した野菜である..

ジョンダルは"ひょんにむ"のヒョンニムである俺を<ボス>と呼び..
有機栽培の何某について蘊蓄を語るテソンを<そんせんにむ>と呼ぶ..
闇夜のことは当初..<ヌナ>と呼ぼうとしたが..

「私..ジョンダルさんより年下です..」
「しかし..しかし..ん~~..では..<どん#>..とお呼びして..」
「(がくっ..)..名前でいいですよ..」
「はっ#..いや..自分なんぞがお名前を語るなどもってのほかであります..ん~~..ん~~..」
「^^;;..」

ジョンダルのマジな顔に笑いを堪える俺等であったが..ジョンダルは蛸顔で考えた挙げ句..
やはり生物学分類上..おんなと認められる..ということで..結局闇夜は<あがっし>..になった..

「<あじゅんま>..じゃなくてよかったじゃない?..mayo..くふっ...」
「ぁぃぅ★..」
「痛っ..」
「みゃうみゃう..〃」

テソンは闇夜にぐー★..を落とされ..はるみによしよし〃..と撫でられた..

サンドゥに縄張りを奪われた為..もあるのだが..クラブ[オールイン]に来る前..
テスはジョンダルを含む最後に残った幾人かの子分達に夜の仕事から撤退させた..
そして手持ちの金をはたき..江北の小さな倉庫を買い取り..
ジョンダルを中心に元子分達に<なんでもや>と称する便利屋を持たせた

始めた頃は皆..強面の風貌だ..<なんでもや>は順調..とは言えなかったようで..
祭でテスが留守の間も幾度か連絡が入り..ジョンダルはテスに弱音を吐いた..
その都度俺等は4人で祭のホテルからこの<なんでもや>まで車を飛ばし..
デカイ図体を縮めているジョンダルをああだこうだと慰め~~の..叱咤し~~の..したものである..

「ひょんにむ(;_;)..」
「何よ..」
「自分等が明るいお天道さんのもとで仕事をするなんざ..鼻っから無理だったんです..」
「そんなの最初からわかってるよ..
 でも僕はお前達をいつ何が起こるか解らないカンペに戻したくない..そう思ってるし..」*カンペ=ちんぴら..ごろつき..ヤ○ザの意
「はぃ..(;_;)..」
「それに..僕みたいに躰に傷残して欲しくない..哀しむ家族がいること..忘れちゃ駄目だよ..」
「イエ..(;_;)..」
「ったくぅ..デカイ図体してさぁ..しっかりしなよ..ジョンダルぅ」
「ひょんにむぅぅ(;_;)..」

ある時..また意気消沈しているジョンダルを見た闇夜がテスの耳元でこにょこにょこにょ...と囁いた..
テスは弾けるように闇夜を見..ジョンダルに見えないように闇夜に力強く親指を立てて見せた後..闇夜に頷いた..
そして<えばりてす>は両腰に手をあてがい..ジョンダルに言った..

「ジョンダル..」
「はっ#..ひょんにむ#..」
「リサイクルも同時に始めようか..」
「り..リサイクルですか..」
「ぅん..この界隈なら結構イケルと思う..」

闇夜は<なんでもや>界隈を既にリサーチ済みで..
この近辺の住民はそうそう新品の家具等を揃えられない..と考えていた..
そして闇夜はジョンダルの手前..テスからこの提案を言わせるよう..テスに耳打ちをしたのである..

「ひょんにむ..」
「何..」
「自分等でええ品もんが見分けられるかどうか..」
「まぁ..最初は失敗するだろうね..」
「ひょんにむ..(;_;)..」

「でもこのまま中途半端にこの店潰すわけいかないわけ..」
「イエ..」
「僕はお前達が家族にも胸張れるように...人様に喜んで貰える仕事して欲しかったし..」
「イエ..」
「だからこの店..お前達に任せたんだ..わかってるよねぇ..」
「ひょ..ひょんにむ#...自分らは自分らなりにまた奮起致しますです#..」
「そうだね..また頑張るしかないよ..」
「はいっ#.」
「ジョンダルは返事だけはいいんだよなぁ..いっつも..」
「ひょんにむぅぅ..^^;;...」

<えばりてす>は時に情深い心優しいひょんにむなのである...
程度のいいリサイクル品を仕入れる術やら..回転率の良い品揃え..店内レイアウト..チラシのデザイン..等々..
ジョンダルが<あがっし>のアドバイスを受けたおかげか..
<なんでもや>のリサイクル品は評判を呼び..近頃は売上も伸びて順調のようである..

テスはパン屋の配達の途中..定期的に<なんでもや>の帳簿チェックをしに行く..

「な..売り上げが少ないと..怒鳴るのかぁ?..テぇスぅ~..」..部屋で俺が揶揄すると..
「そうだよ..当たり前でしょ..へへん..」っと<えばりてす>は俺に返す..

こう見えて..うちのカミさん..なかなかどうして..帳簿のチェックはかな~~り厳しいのである..
テスがちょいとだけ<えばりてす>になれる要因..ここにあり..てなとこだろう..


「(;_;)..この世にこんな旨かもんがあるとですか..
 田舎のはらぼじ..はるもに..あぼじ..おもに..うりとんせん..福と玉にも食べさせたかぁ..」

福と玉とは..ジョンダルの実家にいるペットのニワトリである..
故郷のじっちゃ..ばっちゃ..父母..妹..弟達を想い浮かべながら..
ジョンダルは目を潤ませ..蛸顔をくちゃくちゃにしながら試作中のスイーツを堪能した..
まぁ..その後..ジョンダルはバニラとチョコと抹茶のアイス最中3個..をばくばくと平らげたが..

「で?..また店で何か問題あったわけ?..ジョンダル..」
「イエ..ひょんにむ..」
「何なの..」

ジョンダルは..こもこもと話を続けた..

「そっか..ちょっと困ったね..そのお客様..<なんでもや>のお得意さんでしょ?..確か..」
「イエ..ひょんにむ..」
「お客様には信用第一.."出来ません"って言えないしなぁ..」
「そうであります..がしかし..なにせあれは実に頑丈な【カテナチオ】..でありまして..」
「何よジョンダル..横文字なんか使っちゃって..」
「ぁ..ぃや..自分はわーるどかっぷで..覚えたのであります..」
「「「「ぷっ...」」」」

「それ..いつ期限なのさ..ジョンダル..」
「2日後には..どうしても..という依頼でして..」
「そ..じゃぁ..ちょっとこっちで検討しておくよ..」
「はっ#..ひょんにむ#..ひとつ..よしなに..」

はるみが蛸頭のてっぺんをつるんこ@つるんこ@..撫でるまで..
蛸顔のジョンダルはテーブルに額をくっ付けていた..

「ひょんにむ..このバケット..つーんですか..自分はこれ1本では足らないであります#..」
「たは..ジョンダルはこの図体だから..しょうがないか..」

<えばりてす>は朝食用のストック分にしておいた本日のパンを残らず袋に入れ始めた..
その様子を"わくわくわく#..@@.."と子供の様に眺めていたジョンダルは
パンやら..パウンドケーキの入った袋を<えばりてす>から受け取ると..
また腰を90度に折り曲げ..深々と挨拶の後...のっしのっし..まあるい躰を揺らして帰っていった...


「ぁん...ちぇ~~みぃ~~(^o^)//..」

外階段を降りていくジョンダルの姿が見えなくなった途端..
<えばりてす>は俺の首に巻き付き..いつもの<あまえてす>に戻った..

本日のcasa..
実に来客の多い...実に濃ゅ~~い一日であった..ん..


千の想い 95   ぴかろん

店に入り事務室に行く
早めに来ているチーフ代理に挨拶する

「先生?」
「はい?」
「先生も…ダイエットしてるのか?」
「いや」
「なんか…目の下にクマが…」
「寝不足なんだよ」
「え!まさか毎晩ウシクと」
「研究を」
「研究?!…しゅごいな、先生は『徹底的に追及する派』なんだな」
「うん…。データ取って分析しようと思って…でも…データが中々取れないんだ」
「…そんなもの…どうやって取るのさ!長さとか測るのか?」
「長さも…測るかなぁ…」
「も?」
「厚さが重要なんだ」
「熱さ?…どこの?!」
「主に下腹」
「しっ…下腹をどうやって測るんだよ」
「それが難しいんだよ、相手は寝てるだろ?気をつけないと折れるんだ」
「折れる?」
「そう…折れる…大事な物が…」
「だっ…だいじなものがおれるって…」

俺の頭の中ではエラいモンがばきりと折れてしまった先生の図が見える

「それって…どういう研究になるの?体力自慢?」
「は?」
「毎晩ウシクと研究してるんだろ?長さ測って熱さ?熱?下腹の?測る?大事なモンでそれが折れる危険性がある?」
「うん…長年愛用してるから折れてほしくないんだ」
「そ…そりゃ普通…折れて欲しくないよ…」
「あ…これウシクには内緒ね。あの子、いつもぐっすり眠ってるから…」
「は?!」
「寝てる間じゃないとデータ取れないんだ…」
「…」
「ん?」
「あ…いや、先生って…意外と『情熱家』なんだな…」

うふんと先生は笑った
確かに先生は色っぽいと思う
素敵だな
じっと見つめていたら、どすんばたんと事務室のドアが開いてウシクが飛び込んできた
そして俺をじっと見てから

「いやぁぁぁ!」

と叫びながら、先生に突進した

ばきっ☆

「あああああ!おおお…折れたぁぁぁ!」
「え…折れた?」
「せんせぇっ!誤魔化さないでよ!ラブの次はイナさん?!ラブが太目だから細いイナさんに鞍替えしようっての?!」
「お…折れてしまったぁぁ…うう…あ」
「先生、何が折れた…」
「イナさん!近づかないでよ先生にっ!先生は貴方の好みの顔じゃないでしょっ?先生を見つめないでよっばか!」
「…ばかって…ウシク…」
「折れたよぉウシクぅ…ぐすん…」
「先生!」ぎゅうううう
「あうお…」

何かが折れたらしいのに、ウシクはおかまいなしで先生をぎゅうぎゅう抱きしめていた
久々のジェラシーモードのウシクは、なんだか…迫力があるな…
俺は二人を残してロッカールームに行った

次々と集まってくるメンバーに、今夜テジュンがジャンスさんと来店する事を告げ、ジャンスさんを喜ばせてやってくれと頼んだ

開店時間になった
ラブとギョンジンはまだ来ない…
珍しいな

*******

どれぐらい時間がたったのだろう
ダーリンは目覚めたらしく、床に転がってうとうとしていた僕の太腿にドスンと降り立ち
(僕が切り裂くような悲鳴を上げたことぐらい誰にでもわかるだろう…)
そして僕を蹴り倒した
(軽くだけど…)

「んもぉこんな時間じゃねぇかっ!どーすんだよっ間に合わないじゃんかっ!」
「ふぇ?」
「『ふぇ』じゃねぇよ!家に戻ってシャワー浴びてテジュンに買ってもらったピンクの花柄シャツ着て出勤しようと思ってたのにっ!もうこんな時間…あああとりあえずシャワーだ…」

ダーリンは僕を足蹴にしてシャワールームに行ってしまった
僕はノロノロと立ち上がり、ダーリンの吐いたセリフを反芻した

『テジュンに買ってもらったぴんくのはながらシャツシャツシャツ…』

…覚えていたか、あのジジイのコトを…

ぼんやりとそう思い、洗面所に行って洗顔・歯磨きをした
ダーリンがシャワールームから裸で飛び出してきて僕を突き飛ばし…あうっ☆
そして猛烈な勢いで歯磨きしだした

「あんらあにゆっぐいじてんろ!いそいれいそいれ!もうじかんがらい!はやぐ」
「え?らり?」
「もうしゅっきんじこくら!ちこくら!」
「え?」

僕は口に泡をつけたまま、ベッドルームに置いた腕時計を見た

「が!もうごんだじがん…」

しまった…寝すぎた…
というか…ちっと奉仕しすぎたのか…う…

それから大急ぎで歯磨きを終え、着てきた服のままBHCに向かった
店は既に開店していて、客用入り口から飛び込んだ僕達を、お客さんとBHCホ○ト全員がビックリ顔で出迎えた
その顔の中に、『傷ついて 泳ぐ垂れ目の 濃い顔の馬』もいた…

*****

今日はメンバー全員が揃うはずだ…ラブとギョンジンが来てないけど無断欠勤はしないだろうし…
ジャンスさん、喜んでくれるだろうか
それよりテジュンは大丈夫かな…

開店前のチーフの話、そしてチーフ代理の提案する『笑顔体操』をやりながら考えた

「イナ!今その『笑顔』じゃない!」
「へ?」
「今は『口とじ横広げ笑顔』です。はい、もとい~。ハナ・トゥル・セッ」むにぃぃぃ

なんだか知らないけど、顔面を解す効果とよりよい笑顔を作るための体操らしい…
こないだから急に始まった…
他にも『一分開き・二分開き・三分開き・全開』の笑顔、『前歯のみ』の笑顔、『奥歯まで全て見せる』笑顔、『ニヒルな』笑顔といろいろある
一人を除いてみんな上手だ
だれが下手かって?
可哀想に、BH顔じゃない『ソク』だ…
スヒョクに「そんなに口が開かない」と泣きついている…

これが終わると
「いらっしゃいませ、夢の花園BHCへようこそ!」
という声出しをして、いよいよ開店
入り口から両側に並んで開店時のお出迎えってわけだ

ウシクが扉を開ける
お客様が入ってくる

「いらっしゃいませ、夢の花園BHCへようこそ!」
「お…おおお…」
「さ、どうぞ…」
「おおおおああおお…」

先頭に居たのはジャンスさんだ
テジュンは少し離れてくすくすと笑っている
よかった…笑っている…









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